お試しカノジョ
誰にでも笑顔な俺は良い奴ですよアピールみたいじゃん
「夏子、おはよう」
「歩美おっはよ!今日早かったんだね」
「…まあ」
教室に着くと、歩美は自分の席で読書をしていた。
私に気づくと挨拶をしてくれたけど…。
いつもは私と同じ時間帯のバスに乗るのに、一本早いバスに乗ったのかな。
「…歩美、なんか嬉しそうじゃない?なにかあったの?」
「そう見える?」
「うん」
「……実はね」
言おうかどうかちょっと悩んだのか、でも顔を赤くしながら、話してくれるみたいだ。
私はカバンを机に置いて耳を傾ける。
「…やっぱり内緒」
「えぇ!なにそれー」
「夏子は、伊藤くんとどうだったの?」
「どうって…?」
朝から嫌な名前を聞いてしまった。
イトーだって。イトゥー。歩美も、もうヘラ男でいいのに。
「なんか、男嫌いを克服できそうな感じがしたから」
「私が?あははっ、ない!」
真顔で断言する。
「大体、あんなヘラヘラした奴気に食わないだけだっての。誰にでも笑顔な俺は良い奴ですよアピールみたいじゃん」
「…夏子」
「だって本当のことじゃん。顔だけイケメンも残念よねぇ」
と、ケラケラ笑っていると後ろに引っ張られた。
「誰が残念イケメンだって?」