お試しカノジョ


「ちょっ、うわ!!触んないでよ!」

「朝から元気だね夏子ちゃん。藤森さんおはよう」

「おはよう、伊藤くん」




のほほんと、ヘラ男と話す歩美。


それを見てイラッとする。




「私の歩美に話しかけないで」

「ところで夏子ちゃん、俺のID登録してくれた?」

「さあね」

「……さあね、って」

「ほんっと、ウザいな!女子かあんたはっ!!」




未だに離してくれない手。


私の制服を掴んだまま。


シワになるじゃん。


直に触られないだけマシだけど、やはり嫌悪感はある。




「下の名前で呼んでる…」

「夏子ちゃんとは距離が結構縮まったからね」

「縮まってない!嘘を言うなくそ野郎」

「夏子ちゃん」

「なによ」

「あんまり口が悪いと、塞いじゃうよ?」




ニコーっと王子様スマイルを見せたヘラ男に、言い返そうと口を開いた。



しかし。




「きゃーーーっ!」
「どういうこと!?」
「やっぱり付き合ってんの!?」
「最近付き合ったんだってさ!」
「なんで西本さん?」
「やだよー、伊藤くん!」



悲鳴が廊下から聞こえてくる。


呆気にとられながらも、周囲を見渡すと、注目の的になっている私たち。


私は、わなわなと震える。




「〜〜〜ッんの!ざけんなヘラ男っ!」

「え…ぐふぅ!!」




隣の机に置いてあったカバンを手にし、思いっきりヘラ男の顔目掛けて投げつけた。
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