お試しカノジョ


「あのヘラヘラ野郎ッ」





誰かのカバンを投げつけた後、走ってトイレに駆け込んだ。


カバンの持ち主に悪いなと思うが…。
後で埃を払っておこう。


朝から溜息が漏れる。




「ねえ、西本さん」




トイレの鏡を見ながら、走ったせいで乱れた髪を整えていると横から話しかけられた。




「…はい?」

「西本夏子よね?」

「うん」




強気な印象を受ける女の子と、隣にいるもう1人の女の子。


2人ともなかなかの美少女だ。




「冬樹と付き合ってるって、本当なの?」




付き合っているか。


その質問に私はどう答えればいいのだろうか。


偽ながら彼女だ。


しかしそれは私が付き合いたいと思っていたわけではない。




「付き合ってるの?どうなの!?」

「…まあ」




眉間にしわを寄せて、いかにも怒っていそうな彼女。


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