お試しカノジョ
「あのさ」
「なに?」
「それ、嫉妬という名の文句って言うんじゃないの?」
「は!?」
1時間目から体育なので、髪を結びながら思ったことを言ってみた。
「フユキのタイプじゃないのにカノジョなんて、ありえないって言ってんでしょ」
「違うわよ!ただ、どうして冬樹が本命つくったのかと」
「だから、それだよ。あんたみたいな女がなんでフユキの本命になってるの?ってさ」
ばかなの?
内心鼻で笑う。
「あ、あたしはただ!」
「なんで本命つくったの、なんて私に聞かないでよ。そんなのあいつに直接言えばいいじゃん」
「…っ」
冷ややかな目で、名前も知らない自称フユキの元カノを見る。
「あいつに直接言わないってことは、私に文句言いに来たんでしょ?」
「あ、あたしは…」
「言っておくけどね」
パチン、とゴムを鳴らして再び鏡を見る。
よし、整ってる。
「そういう醜いことしたって、フられたことに変わりないから」
それだけ言って、2人の間を通って教室に戻った。
あーあ、これで私ターゲットにされたらどうしよう。
これだから恋愛はややこしい。