お試しカノジョ
…いやいやいや。
なにヘラ男をガン見してんの私。
ブンブンと頭を振って女バレに集中する。
「わたしは良いと思うけどね、伊藤くん」
「は?」
「結構一途そう」
「ぷっ、ないない。だってあいつカノジョが何人もいたんだよ?」
一途とかない。
軽く、付き合おうよとか言える人に一途はいない。
「夏子」
「うん?」
「わたしの勘、よく当たるよ」
「……」
そう言った歩美に私はなにも言えない。
確かに歩美の勘は当たる。
だがしかし。
「それとこれとは別だと思いたい」
「…まあ、いいけど。でもわたしは夏子の男嫌いが直るのに、伊藤くんに賭ける」
「私は賭けない」
歩美、実はヘラ男のこと気に入ってるのかな。
「やった!冬樹シュートしたぁぁ!きゃーっ!」という女子の悲鳴をBGMに、私は欠伸をした。