お試しカノジョ



「夏子ちゃん!」

「げっ」





着替え終わり、教室に戻ろうというところへ、ヘラ男がやってきた。


あからさまに顔をしかめ、持っていた体操服の入っているカバンを振り回した。




「うわっ、危なっ!!」

「チッ」

「まあ当たってもさほど痛くないと思うけどね〜」

「水筒入ってるからね。そこ当たったら良い音鳴るわ」

「え……」




再び振りかぶると、ガシッと腕を掴まれた。




「うひぃ!触んないで!!」

「色気もなにもない声だね」

「っるさい!」




くっそ!ちょっと痛いし!




「伊藤くん、なにか用事があったんじゃないの?」

「あ、そうそう。帰り寄り道したいとこあるから」




歩美の言葉に、あっと思い出して私に言った。


は?





「勝手に行けばいいじゃん」

「ん?一緒に帰るんだから言わないとダメでしょ」

「は?」

「ん?」





すごいアホ面をしているのだろう。


ヘラ男に頬っぺをぷにっと触られた。




「いやぁぁぁぁっ!!」

「あはは、ぷにぷに」

「死ね死ね死ね!」

「じゃ、よろしくね」




笑ながら私を解放し、待たせていた友達と 走って行った。


あいつッ、本当にウザい!!!
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