お試しカノジョ
今日の授業はすべて終わり、生徒たちは帰るなり部活に行くなりと開放的な気分で教室を出る。




「夏子、伊藤くんとデートだね」

「デートじゃないよ歩美」

「わたしは用事があるから一緒に帰れないけど頑張ってね」




無表情でガッツポーズをとる歩美に、一体なにを頑張るのかと肩を落とす。





「でも夏子けっこう進歩したよね」

「へ?」

「だって昔はあんなに毛嫌いしてた男の子と、普通に話してるんだから」

「いや、普通にはしてないから」




鳥肌たつから。ゲロ出そうだから。




「…夏子は少し自分に鈍感な部分があるよね」

「歩美の方が鈍感だよ…」




じゃあね、と教室を出て行った歩美に手を振りカバンを持つ。




「夏子ちゃん、帰ろうか」




ニコリと笑いながら私の席までやってきたヘラ男に眉を寄せる。


くっそ、無駄にイケメンなのは本当なんでだろう。




「途中でバス降りるんだけど、そこからのバス代は俺が払うから安心してね」




降りないしこのヤロー。


ギロリと睨みつけるが微笑されるだけだった。
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