お試しカノジョ
「これ、夏子ちゃんのでしょ?」
「嘘っ!?」
私は急いでカバンを漁るが、本来あるべきはずの場所に私の生徒手帳はなかった。
そして目の前の生徒手帳をガン見する。
「いやー、拾ったときは夏子ちゃんのだと分からなかったけど、中身開くとこの写真があったからさ」
「んなっ、こ、このッ」
「名前とかは書かれてないし、どうしようかと思ったよ」
ヘラ男が私に見せつけている、私の生徒手帳。
そこに挟まれている写真。
それは紛れもなく、私が歩美を盗撮したベストショットの1枚だった。
「最初これ見て藤森さんのストーカーの人が誤って落としたのかと思ったよ」
いつものヘラヘラした笑みを浮かべているこの男だが、今は後ろに黒いオーラが見える。
そして、ストーカーという言葉が私に重くのしかかる。
「誰かさんが俺のことストーカーって言ってたけど、これはこれでなかなかのストーカーだよね」
「…う、うるさい」
「いつもの覇気がないけど、どうしたのかなー?」
こいつ、本当に性格悪い!!!!
ニヤニヤと笑うヘラ男。
こんな男が世の中にいていいのか!?
「私はストーカーじゃなくてただ歩美が妹のように可愛いだけよ!」
「うん、どっかのドラマで似たようなセリフがあったね」
憎たらしい笑顔を振り撒きながら、私の大切な歩美の写真を舐め回すように眺める。