お試しカノジョ
「それじゃあ何してもらおうかなー」
「だからしないっ」
ふいっと顔を背けて腕を組む。
なにを言われようが、聞いてやるもんか!
「……じゃあ、はい」
「なに?」
「これ、取ってみて」
ニッコニコしながらそれはそれは楽しそうに、私の生徒手帳をぶらぶらと見せつける。
え?なに?それを取ってみろと?
返してほしいなら自分で取れと?
「返してほしいんでしょ?」
「そうだけど」
「なら取ってみてよ」
「…何かあるんじゃないでしょうね」
「人聞き悪いなぁ」
パフェもそろそろ食べ終わる様子。
私は何かあるんじゃないかと疑う。
何かあったらこいつ殺す。
私は椅子から立ち上がり、机に片手を置いて、正面に座っているヘラ男が持っている生徒手帳に手を伸ばす。
すると、いきなりその手を引かれたので、女の子らしい悲鳴を上げた。
「きゃっ、ちょ、なに………ッ!?」
自分もやっぱり歩美と同じ女の子だ。
こんな可愛い悲鳴が出るなんて驚いた。
そう思うより早く、視界がヘラ男で覆い尽くされた。