お試しカノジョ
今日も学校…。
憂鬱な気分でバスに乗り、溜息を吐いた。
カバンに入れているポーチから鏡を取り出して、自分の顔を見てみる。
「…ぶす」
目は腫れて酷いことになっている。
この顔を学校の皆に晒すのか、と思うとまたもや気分が鬱になる。
歩美は彼氏できたし、ヘラ男からは酷い仕打ちを受けたし。
「はぁ…」
朝から何度も溜息を吐き、その度に幸せが逃げて行っている気がしてならない。
そして、バス乗り何本目かの停留所。
ウィィンと扉が開き、同じ学校の人が数人乗り込んできた。
そうか、もう田舎は抜けたのか。
「隣、いいですか?」
「あぁ、どうぞ」
隣の席に置いていたカバンを膝の上に置き、声をかけてきた人と目を合わせるため、上を向いた。
嫌だなぁ、こんな顔を人様に晒すなんて。
いや、そんなこと別にいいじゃないか。
歩美にブスと言われなければそんなこと…。
と、思っていると隣に座る予定の人と目が合った。
その瞬間、私はこの世の終わりだと思った。
「昨日ぶりだね、夏子ちゃん」
そこには相変わらずの爽やかスマイルを放つ、1番会いたくない奴がいた。