お試しカノジョ
「なっ…!」
「あ、隣失礼」
「帰れ!!」
「もうバス閉まったから無理かも」
「じゃあどっか行け!」
近づくなっ、と窓側に身を寄せて隣の席にはカバンを置き戻した。
「おっと、失礼失礼」
「だから来ないで!」
ニコニコと笑いながら私のカバンを私の膝の上に置き、席に座りやがった。
私が他の席に移動しようかと思ったが、ヘラ男の足でそれは叶わぬ様。
「ねえ、その目…」
「なによ。ブスだとでも言いたいの?言えば?笑えば?」
「まだなにも言ってないけど」
「お前の顔が語ってんのよ。あと、もう話しかけないで」
ふいっと顔を背け、窓から外の風景を眺めることにした。
うぅっ、また涙が出てきそう。
「ねえ」
無視だ無視。
「そんなに俺が嫌い?」
むしろ好かれてると思ってんなら、あんたの頭すごいよ。
「じゃあ、今から言うのは俺の独り言だから」
はあ?なに?独り言?寂しいな!
内心、色々言ってやる。
「俺さ、夏子ちゃんのことマジになったからさ。このまま彼氏彼女続行ね」