お試しカノジョ
その後、バスの中では特に会話はなく。
気づけば教室に着いていた。
「あっ、歩美!」
席には既に歩美がおり、飛びつく。
「夏子…」
「歩美!昨日のどういうこと!?彼氏ってなに!?そんなこと聞いてないよ!」
「えっとね」
「あとね、聞いて!私、ヘラ男にここここここくは…」
「夏子」
「ななななにっ!?」
「落ち着いて」
「ごごごめん!!!」
朝、ヘラ男に会うまでは歩美に聞くことを覚えていたけど。
ヘラ男に会ってから私はおかしい。
ドギマギして上手く歩美に聞けない。
それどころか、早く私の話を聞いてほしい
という、身勝手な事が浮かんできた。
「彼氏っていうのはね」
一旦、席に着いて落ち着く。
その間、ヘラ男は教室にいる女の子と話を始めた。
イラっ。
「楓くんと付き合うことになったんだ」
「…やっぱり折原か」
「うん」
「でも、あいつタラしだよ?ヘラ男に次いで」
「ヘラ…?あぁ、伊藤くんも楓くんもそういうことはやめたって言ってた」
「へ?」
そ、そうなの?
歩美は微笑んで言うから、私はポカンとする。
女遊びやめたのは…知ってる。
あいつは私と偽恋人になるとき、他の女とは別れた、と言ってた。
ストーカーの子ともなんとかしたみたいだし。
「…夏子?」
「あっ、な、なに?」
「……ううん。いつもならもっと騒いでるのに今日はどうしたの?」
「え、あ…」
「そういえば、さっきなにか言いたそうにしてたけど」
私は顔を真っ赤にする。