お試しカノジョ

けれど




「好きになるときは好きになるよ」

「…?」





あれだけしつこかったのに。


鬱陶しくて仕方なかったのに。


男なんて嫌いのはずなのに。





「惚れたらもう負けだよね」

「…夏子さんは」

「なに?」

「夏子さんは、男嫌いだよね。でも男の人を好きになったことあるの?」





真剣な表情。


それだけその男が好きなのかな、委員長。





「…悔しいけど」

「そうなんだ…」





だってもう、認めるしかないよ。


惚れたんだから。


どこに惚れたのか自分でも定かじゃない。





「夏子さんはその人のこと嫌いだった?」

「当たり前でしょ。
最初は大嫌いだったわ」

「…じゃ、じゃあ!あたしも頑張れば
隼人に好きになってもらえるかな!?」




うっかろ委員長が漏らした、男の名前。
隼人とは委員長が好きな男?





「まあ、努力次第だよ」





まっ、私たちの場合は…



最初からお互い好きだったわけじゃないし。



私もヘラ男も、好かれようと努力したわけじゃないけどね。





「夏子さん!」

「はい?」

「ありがとう!お陰で勇気出たよ!」





恋する乙女は無敵。




委員長の笑顔は、まさに無敵だと思った。


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