お試しカノジョ


どれくらい、経っただろうか。



もう何も考えられない。



頭の中は目の前の男でいっぱい。



すると、最後に唇をぺろりと舐められて、今度は抱きしめられた。





「はぁ…可愛い…」

「こ…っ、この…!」

「んー?今日は元気ないねぇ。どうしたの?」





手に力が入らず、ポカポカとしかヘラ男の頭を叩けない。






「ねえ、今のどうだった?」

「は…?」

「本当に?本当に嫌だった?」

「………」

「前の夏子ちゃんなら、俺の舌に噛み付いてきそうだけど」

「……」




嫌…だった。



こいつと知り合ったときの私なら、舌に噛み付いてただろう。



けど、今は?



さっきのは嫌だった?



本当に?





「…夏子ちゃん、素直になろうよ」

「………」

「面白い人と付き合いたいからとか言ったけど、そういうの関係なく、俺は夏子ちゃんが好きだから」






今までに聞いたことのない甘い甘い声で耳元に囁く。



ずるい…ずるい。
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