お試しカノジョ


「きゃっ、キャーーーッ!!」
「嘘っ!本当に付き合ってたんだ!?」
「伊藤くんといるあの女の子誰?」
「しかもキスしてたよ!」





遠くもなく、近くでもなく聞こえてくる悲鳴のようなもの。



私は、はっとした。



ここ、門の前じゃん…。



少なかった人が、いつの間にかわらわらと増えていた。



私たちを取り囲むようにして、見物している生徒たち。





「ありゃ。見られちゃってたねえ」

「こっ、こんな大勢の前で…!」

「まあ、いいじゃないか」

「良くない!!」




公開プレイに加えて羞恥プレイ!?



なんの拷問よ!!



と、1人でわなわなと震えていたら



大衆の中に歩美と折原を見つけた。





「あっ、じゃあ俺たちも行こうか」

「どこに?」

「楓たちのところ。藤森さんに今会いたくないの?」

「…行く」





そういえば、私は歩美になにも話していなかった。



だから私とヘラ男のことも知らないだろうから…。



ヘラ男に手を引かれながら、冷やかしてくる大衆を掻き分けて歩美の元へ進んだ。
< 86 / 132 >

この作品をシェア

pagetop