お試しカノジョ
「きゃっ、キャーーーッ!!」
「嘘っ!本当に付き合ってたんだ!?」
「伊藤くんといるあの女の子誰?」
「しかもキスしてたよ!」
遠くもなく、近くでもなく聞こえてくる悲鳴のようなもの。
私は、はっとした。
ここ、門の前じゃん…。
少なかった人が、いつの間にかわらわらと増えていた。
私たちを取り囲むようにして、見物している生徒たち。
「ありゃ。見られちゃってたねえ」
「こっ、こんな大勢の前で…!」
「まあ、いいじゃないか」
「良くない!!」
公開プレイに加えて羞恥プレイ!?
なんの拷問よ!!
と、1人でわなわなと震えていたら
大衆の中に歩美と折原を見つけた。
「あっ、じゃあ俺たちも行こうか」
「どこに?」
「楓たちのところ。藤森さんに今会いたくないの?」
「…行く」
そういえば、私は歩美になにも話していなかった。
だから私とヘラ男のことも知らないだろうから…。
ヘラ男に手を引かれながら、冷やかしてくる大衆を掻き分けて歩美の元へ進んだ。