お試しカノジョ
「歩美!!」
「夏子……」
走って夏子に飛び付く。
すると横にいた折原が、歩美の腕を引いて言った。
「ここじゃ、なんだし。場所変えて話そうよ」
「…そうだね」
歩美と折原がなにやら意味ありげな顔をしながら私を見た。
な、なに?
場所を変えて話すような内容?
「…ヘラ男、あんたなんでニヤニヤしてんのよ」
「してないよ。それより、そのヘラ男って呼び方なんとかしてくれない?」
「嫌よ」
今更じゃない。
ハッ、と鼻で笑うと苦笑いされた。
「そうだねぇ、じゃあ…あそこのベンチにでも座って話そうか」
なんで折原なんかが仕切ってるんだろ。
そんなことを思いながら、歩美と手を繋いで折原に付いて行った。
反対側の手をヘラ男が握ってきたので、思わず腹を殴ったのはあいつの自業自得と思いたい。