ブンベツ【完】
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今日も暑い中、無愛想に煙草を吹かしながらこのお店に似つかわしくないその人は店番をしていた。
「今日わ」
季節は7月の上旬。
梅雨は見事に終わり一週間前から日本は灼熱国に変わった。
命が一瞬間の蝉がここぞとばかりにBGMの代わりを果たすのを横目に私は、日の当たらないお店へ逃げるようにして入った。
「店番代わりますよ」
中に入ればクーラーの風の匂いと甘い花の匂いが混じって鼻を掠めた。
冷風に当たりながら新三種の神器もだてじゃ無いと感心して、彼がーーーーーーカイさんがいるカウンターへ近づく。
ここは一見普通の花屋だ。
少し狭い店内に鮮やかな花たちがそこら中水の入ったバケツに埋けられて、誰かに飾られるのを待ちに待ってる。
だけど、ここ最近お店の経営状態が良く無いらしく売り上げがまったく上がらないそうだ。
店主曰くその原因は、無愛想に店番をする店員に問題があるらしい。
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