ブンベツ【完】
それからというもののカイさんは全く起きる気配がない。
ベッドから持ってきた掛け布団を掛けても反応がない。
カイさんは起きないし特にやることもないから時間を弄ぶばかりで、ヨシノさんは勝手に冷蔵庫とか開けていいとは言ってたけど流石に本人の了承もなくそれをやるのは気が引ける。
時間もそろそろお昼だし朝ごはんも食べてないからお腹が空いてきた。
何か必要なものがあればこのマンションの隣にコンビニがあるってヨシノさんが言ってたから行ってこよう。
寝室に戻ってジャケットとコートを羽織って玄関先でパンプスを履いていると、
「どこ行くんだよ?」
背後にいつの間にか起きてるカイさんの姿。
壁に体を預けて腕を組むその姿は少し怒ってるようにも見える。
「また、いなくなんの?」
「ッ」
何で責められなきゃいけないんだろう。
ただコンビニに行こうとしただけなのに、どうして、そんなに、悲しそうな顔をするの?
そんな顔をするカイさんは目の前まで来ると、私の肩に額を乗せてそれ以上は何も触れてこず、壮大な溜息とただ弱々しい声だけが耳に響く。
「…もう俺の前から勝手にいなくなんの禁止」