ブンベツ【完】


「こ、コンビニに行くだけです」


切なげに紡がれる想いに思わず声が上ずる。

甘えるその姿にそっと抱きしめてしまいたくなる手を必死に抑えた。

駄目だ。
動揺なんて見せちゃいけない。
この人のペースに持ってかれる。


「…もうお昼です。お腹が空きました」

「ごめん」

「……」

「4年前、幸せにできなくて」


…そんなの、今更謝られても困るのに。
そもそも謝られる筋合い、私にはない…。

私がいなかったらカイさんはもっと素直な選択が出来たはず。
アヤセさんを純粋に想い続けれた。

幸せになれるチャンスを奪ったのは私の方なのに。


「もっとこうしてやればよかった、とか」


こうやって今でも私なんかへの罪悪感に囚われて自分の事は二の次で。


「俺がちゃんとケリをつけてたらあんたにあんな思いさせないで済んだかもしんねぇ、とか」


もう忘れてほしいのに。
なんでこの人は今でもこんなところで私といるのよ…?


「俺はまだ、あんたに、何もしてやれてない」


至近距離で見つめるカイさんの目には苦痛と後悔で染まっていた。
眉を寄せ切なげに絞り出す様な声でそれを口にした瞬間この人もまた、ブンベツが出来てないんだと思い知らされた。


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