ブンベツ【完】
「何か用があるとは思えませんが。今のアスカさんの状況は誰が見ても”暇人”と思うのが筋です」
「だから暇じゃないっての」
「話になりませんね」
「休日なのにデートもしないお前が《余所見》をしてないかカイくんに報告するっていう”仕事”をしてる」
「…本当に暇なんですね」
アスカさんこそ、こんな所で油を売っているなら彼女の1人や2人作ったらどうですか。
と喉まで来てる台詞を吐き出そうかと思ったけど、まともな返答が期待できないから大人しく飲み込む。
「さっきから電話鳴ってるぞ?」
「無視してください」
鞄から届くバイブレーションの合図がさっきから鳴り止まない所為で更に憤りを感じてしまう。
茶々を入れてくるアスカさんに加え、生き物のようにしつこく動き続ける携帯のダブルパンチにそろそろ限界が訪れそうだ。
「男か?男だろ?」
「バカ言わないでください」
「誤魔化すなっての。お前が出ないなら俺がでやるよ。ほら、携帯寄越しな」
私の顔の前で手のひらを開けて完全に煽りにきている。
「…母です」
「にしても鳴りすぎじゃね?お前、何やらかしたんだよ」
こういうときに一人っ子が損だと思う。私だけに注いでれた愛情は確かにあるってわかってるけど、それは成人をして社会人になっても変わらないというのは「愛情」と言っていいのか、もしくは「子離れができてない」と言うのか。