ブンベツ【完】



「嘘だよ。マジで可愛い」

「ハイハイ。もうその手には乗りませんって」


「うわっ信用失ってんじゃん!俺泣きそう」とか言いながらもゲラゲラ楽しそうに笑って全然泣きそうでもなんでもない。

言葉って人が使うによってこんなにも軽くなるんだって思った。



それから結局凄い人の数に呑まれながらも会場へ向かうと雑踏に混じって祭囃子が聞こえてくる。

日が沈み提灯にライトが灯り、お祭りに来たんだって実感に襲われている私にアスカさんは「人ヤベェな!あちぃな!何で進まんねんだ?!」と文句を言うばかり。

人が多すぎてなかなかスムーズに歩けず、足を踏んでしまったり踏まれたりの負の連鎖。

気を抜けばアスカさんと逸れてしまうと思ったけど、落ち着きがないアスカさんに呆れる私はそれも一つの手かもしれないと思った。


「バカこっちだよ!」

「えっ?!えっ?!」


私とアスカさんの間に人が次から次へと割り込んできて埒があかない。


「ハナ!」


痺れを切らしたアスカさんが少しキレ気味で私の腕を強引に掴んできた。



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