ブンベツ【完】
「なぁ」
中々進行しない中、祭り囃子に混じって手首を掴むアスカさんが呟いた。
なんだかほんの少し手首に力が込められてるのは気のせいだろうか。
「なんですか?」
「すっげーバカな質問していい?」
「……嫌って言っていいですか?」
途轍もなく嫌な予感しかしない。
きっと間違いなくロクなことがないだろう。
この人に会ってからロクなことがあった試しがない。
くだらない質問を食らわさせられるって考えるだけで胃がキリキリしそう。
「その首のやつ、もしかしてカイ君?」
「…ッ?!」
的にもろ的中したそれに思わず反射的に隠すように触れた。
そんな私にまるで確信があったようなアスカさんはニヤリと意地の悪い顔で私を見る。
恥ずかしくて吃ってしまう。
言い訳するにも話をずらすにも首のそれに触れてしまった時点で、もう答えを出してしまった。
なんて意地が悪い。
「なに?カイ君の女?」
「ち、違います!」
「ははっ!若いっていいねぇ」
「若いって、」
「でもカイ君はやめといた方がいい」
「え?」
「だってあの人はーーーー」