ブンベツ【完】
そうだ。
きっとそうに違いない。
……そう思ってるのに、頭ではそう思ってるのに、私の中のモヤモヤは全然消えてくれない。
鈍器で頭を殴られたように花火なんて全然入ってこなかった。
私の思考回路は全部そのことだった。
だから花火がどんなだったのかも屋台が何があったのかもあんまり良く覚えてない。
花火を半分ぐらい見て、これから知り合いと合流するからと言ったアスカさんに付いてく気になれず、その場の解散になった。
断った私に「そっか」と良くわかんない表情を浮かべ、駅まで送ると言ったけど断ってそこで別れた。
こっちに向かってくる人の群れに逆らって駅に着き、それなりに人数がある電車に乗った。
いつものように電車に揺られてたけど気分はすっきりしないまま。
最寄りの駅に着いたのはアスカさんと解散をして一時間くらい経った頃。
お祭りに行ってたことが嘘のように思えるこの駅は本当に人の気配がない。
改札を抜けて家に向かおうとしたその時、
「…….ど、して……」
駅前に背丈がそれほど高くない桜の樹の下。
私の声に反応して気づいて気怠そうに立つその人は、やっと来たと言わんばかりの表情を向けてこっちに近づいてくる。