ブンベツ【完】


どうして…なんでこんな所に、


「アスカから連絡があった。あんたに逃げられた、ってな」


それはまぎれもないカイさんの姿だった。


会いたかった。
今日はずっとカイさんのことを考えてた。

だけどアスカさんの言葉に胸がぎゅっとなって不安に苛まれて、それが頭から離れなくて。
バカみたいにずっとグルグルしててモヤモヤだって消えなかった。

だけど、カイさんに会った瞬間。
そんなのどうでもいいって思った。


半信半疑だった自分が馬鹿らしくなって、無理に言い訳考えて押し込めようとしてたけど。

カイさんの口から聞いてないものを飲み込むのは、それはなんだか違うと思った。


「アスカになんかされたか?」

「何もされてませんよ」

「マジで何も、」

「それより、浴衣どうですか?」


裾を掴んでクルッと一度回って見た。

褒めて褒めてと言うような態度が明から様過ぎたような気もするけど、見たいと言ってくれたカイさんの感想を聞きたい。

まだかまだかと『待て』が出来ない子供のような私にカイさんはフッと口元を緩め、


「目の前にイイ女がいる」


まるでスーパーモデルになった気分だ。


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