ブンベツ【完】
「き、着替えって私のですか?」
「もう終電もないから帰れねぇよ」
「え?!まだ9時ですよ?!」
確かに各駅しかないし栄えてるとは思えない所だけど終電終わるの早くない?!
だったら私どうやって帰ればいいの?!
焦る私と違ってカイさんは至って冷静な様子。
呑気に煙草を吸ってる場合じゃないですってば!
「普通着替え持ってくんだろ」
「普通って、まさかこんなことになるなんて思わないですよ!」
「祭終わって会うって時点で察しろバカ」
「そ、そんなの言ってくれないと分からないですよ…」
「そうじゃねぇよ。浴衣姿見てその場解散なんて甘いっつってんだよ」
まるで私を嘲笑うかのように口角をあげて笑うカイさん。
まだ吸いかけの煙草をシンクに押し潰して捨てると状況に付いていけてない私の腕を引っ張って引き寄せた。
いつものように腰に腕を回して支配するかのように上から私を見下ろすこの状況。
切れ長の鋭い瞳に囚われて逸らすことを許されないみたいだ。
変わった……。
「はなっから帰すつもりなんてねぇよ」
それが合図だったかのように有無なしに私の口を塞いだ。
さっきとはまるで違う、 “男の瞳” に変わった。