ピッキング・カルテット
その日の夜。

夏々子は寝る前にラベンダーティーを淹れた。

カップを手に持つと、夏々子は窓の方へ歩み寄った。

カーテンを開けると、どんよりとした灰色の雲が夜空を包んでいた。

今夜は雪が降ると天気予報で言っていたことを、夏々子は思い出した。

「――雪か…」

夏々子は呟くと、窓に背中を預けた。

背中に伝わる窓の固くて冷たい感触に、今日の外の空気がよく冷えていることを知らされた。

部屋の中は暖房が効いているから温かいものの、部屋の外はそうじゃない。

(雪と聞いただけなのに、な)

雪と言う単語を聞いて思い浮かんだのは、幼い頃の出来事だった。

夏々子はその出来事を消すように、ラベンダーティーを口に含んだ。
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