ピッキング・カルテット
「――だから、玉井くんは自分よりもナナコちゃんのことを心配しとったんか…」
荒畑は小さな声で呟いた。
声をあげて泣き出した桑田に、瑛太は荒畑のところに歩み寄った。
「物心がついた頃には実の父親はいなくて…。
実の母親には捨てられて…。
義理の父親には酒を飲んでは暴力を振るわれて、酒がなくても暴力を振るわれる…。
そのせいでなっちゃんは睡眠障害――不眠症になって、眠るのが怖くなった…。
そんな時に出会ったのが宗助さんで、彼は名前すらなかった彼女に“夏々子”って名前をつけて、実の娘のように大切に育てて、大切にかわいがった…」
淡々と荒畑に言った瑛太が、その声は震えていた。
「夜に眠るようになったのは最近で、だけどそれは宗助さんがいたからできたことだった。
離れて暮らしていても、明日になれば宗助さんに会えることがわかっているから夜に眠ることができた。
だけど…宗助さんがいなくなって…」
そこまで言ったとたん、ガクンと瑛太の膝が崩れ落ちた。
荒畑は小さな声で呟いた。
声をあげて泣き出した桑田に、瑛太は荒畑のところに歩み寄った。
「物心がついた頃には実の父親はいなくて…。
実の母親には捨てられて…。
義理の父親には酒を飲んでは暴力を振るわれて、酒がなくても暴力を振るわれる…。
そのせいでなっちゃんは睡眠障害――不眠症になって、眠るのが怖くなった…。
そんな時に出会ったのが宗助さんで、彼は名前すらなかった彼女に“夏々子”って名前をつけて、実の娘のように大切に育てて、大切にかわいがった…」
淡々と荒畑に言った瑛太が、その声は震えていた。
「夜に眠るようになったのは最近で、だけどそれは宗助さんがいたからできたことだった。
離れて暮らしていても、明日になれば宗助さんに会えることがわかっているから夜に眠ることができた。
だけど…宗助さんがいなくなって…」
そこまで言ったとたん、ガクンと瑛太の膝が崩れ落ちた。