ピッキング・カルテット
「う、植木くん!?」

荒畑が駆け寄って、瑛太の躰を支えた。

「おい、大丈夫か!?」

徳重がペットボトルのミネラルウォーターを持って、瑛太に駆け寄った。

瑛太の目から、涙がこぼれ落ちた。

「何にもできない俺たちが、悔しくて…。

せめて住んでいるところがわかったら…わかったら…」

唇を動かして続きを言おうとする瑛太に、
「植木くん、もういいから!

もう何にも話さなくていいから!」

荒畑は徳重の手からペットボトルを横取りすると、ふたを外して瑛太の口に押しつけた。

「――んっ?」

それまで週刊誌を見ていた本山が気づいた。

宗助逮捕のことが書かれている記事に視線が止まっていた。

誹謗中傷だらけのその記事を書いた記者の欄に視線を動かす。

「――楢崎千恵美(ナラサキチエミ)…?」
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