ピッキング・カルテット
夏の暑さが和らいできた9月の中旬。

夏々子と瑛太は、たいぶ秋らしくなってきた街中を歩いていた。

2人は美容院の帰りだった。

黒に戻った自分の髪の毛先を夏々子は指先でいじっていた。

「もう少しだけ金髪のままでいたかったな」

そう呟いた夏々子に、
「もうすぐ始まる全国ツアーまでに黒に戻すって言う約束だったでしょ?」

瑛太が言った。

「そうだったけど…」

夏々子はやれやれと言うように息を吐いた。

その様子を見ながら、瑛太は少し長くなった前髪に手を伸ばした。
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