ピッキング・カルテット
「えっ?」

桑田は耳を疑った。

「先ほどの君のドラムテクニックを見て、ぜひとも入って欲しいと思ったんだ。

君が刻んでいる8ビートのリズムは正確で、とてもすばらしい。

このままサポートドラマーとして生活して行くにはもったいないくらいだ」

褒めてくれるのは、嬉しかった。

ドラムの基本である8ビートのリズムをそんな風に褒めてくれたのは、初めてだったからだ。

だけど、
「お断りします」

桑田はそう言った後、名刺を宗助に返した。

例えそこでドラマーとして活動しても、結果が目に見えている。

あの頃と同じ結末を歩むのがオチだ。

「いや、でも…」

まだ何かを言いたそうな宗助を無視すると、桑田は逃げるようにその場を後にした。
< 513 / 538 >

この作品をシェア

pagetop