ピッキング・カルテット
「それにしても、一体誰なんだろうな?

宗助さんがインフルエンザを押してまでバンドに入れたがっていたドラマーって」

瑛太が言った。

「ソウちゃん、その人のことをすっごく気に入っていたよね」

そう言った夏々子に、
「あの宗助さんが入れたがっていたんだ。

相当なまでにすごい人だと俺は思うよ」

瑛太が答えた。

2人は話しあいながら病室から立ち去って行った。

今の2人はバンドのメンバーなのだと、桑田は思った。

「――何だよ、おい…」

昨日あれだけ泣いたはずなのに、涙はまだ残っていた。

インフルエンザになったにも関わらず、宗助はそこまでして桑田をバンドに引き入れたがっていた。

そう思ったら、自分が今まで宗助にとった態度が恥ずかしくなった。
< 523 / 538 >

この作品をシェア

pagetop