ピッキング・カルテット
それから1週間後のこと。

今日は最新アルバムのジャケット撮影である。

「まさか、東が結婚していたなんて知らなかったな」

新聞片手にそう言ったのは桑田だ。

「まあ、奥さんが自首してくれたおかげでピッキング・カルテットの容疑は晴れた訳なんだけどね」

瑛太は右耳に赤いダイヤのイヤーカフを身につけた。

「ところで…」

瑛太はカップに紅茶を注いでいる宗助に視線を向けた。

りんごの香りが漂っているところを見ると、今日の紅茶はアップルティーのようだ。

「何だ?

秋だからアップルティーにして見たんだけど、他のフレーバーがよかったか?」

宗助はそう言うと、カップを瑛太の前に差し出した。
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