呪い屋〜呪われし幽霊少女〜
引き出しまで歩き、2枚の紙を取り出す。
「岩崎 麗奈…
藤堂 汰一…」
2人の契約書だった。
書かせてしまった私が悪いんだ…
契約した時点で、人間ではないものへと化した2人。
もちろん、呪いの対象も同様に。
母さんももう…
限界だろう。
どこにいるんだろうか。
どこで苦しんでいるんだろうか…
あの雄介とかいう者は、これからだ。
これから成長していくんだ…
化け物に。
呪いという苦痛を快楽として求める、化け物に。
こんなこと…
やめてしまえばよかった…
私とあの男が消えれば…
全てが終わる。
あの男が生きている限り、あいつはきっと呪い屋としての主を探すだろう。
しばらくは空白ができると言ったって…
私は14年かかった。
あの男の呪いが、完全に体に回るまで、14年。
人による。
でも、短くとも10年だ。
「そろそろか…」
壁にかけられた時計を見、ため息をつく。
14時20分をさしていた。
「もうそんなにたったか…」
あの男のところに向かわなければならない。
あの…黒田という男のところに。
人間ではない。
かといって何であるわけでもない。
なぜか依頼主のことが見えも聞こえもしない不思議な男…
でも、最後にはきっと見えるのだ。
依頼主も、呪いの対象も、完全に人間ではなくなってしまったその時には。
そんなことを思いながら、部屋を抜け、諦めの気持ちを抱えながらドアを開けた。