呪い屋〜呪われし幽霊少女〜
異変
それから、しばらく何もなかった。
麗薇と会わない時間はまるで空白のようだった。
麗薇に会いに行っても、なぜかあの事務所にいないのだ。
毎回ドアの前で立ち尽くし、ため息ばかり残していく俺。
まるで、あの最後に会った時から時間が止まっているかのように。
しかし…
逃げられはしないのが現実というものだ。
「麗奈…?」
遠慮がちに声をかける俺。
なんとか反応してほしかった。
でも麗奈は…
あの日から、学校でも俺のことを避けているようだ。
「麗奈…
ほんとごめん。
お願いだから話聞いてくんねぇかな…」
こういう時、どう対応したらいいのかわからなくなる。
俺のあの時の行動が悪いのはもちろんわかっているのだけれども…
「麗奈…
ほんと、あの時は…」
「うるさい!
…黙っててよ。
少しくらい静かにできないの?」
教室でも、みんなの前でも構わずこんな調子なのだった。
「いや、だから本当に悪かったって…」
「思ってるならもう少しそれにふさわしい態度とったら?
ほんと鬱陶しいんだけど」
その言葉に少し、頭に血が上る。
「そんな言い方ねぇだろ?
話があるって…」
「ほら、またやってる」
指をさされたのに気づき、言葉を途中で呑み込む。
噂されるのは、慣れようとしてもなれなかった。
怖いわけではないけれど、なんでもないけれど…
でも、俺は、実質学校で一人なわけで…
「おい、汰一。
なにやってんだよ」
ずっとニヤニヤしているこいつにつきまとわれる。
なにをしても無駄。
でも、雄介のおかしな様子には皆気づいていないようだ。
というよりも、雄介は俺の前でだけおかしいのだ。
何かが狂ってきている…
麗薇の言っていたことが、いろいろと現実に起ころうとしている…
そう、認めざるを得ない。