呪い屋〜呪われし幽霊少女〜
「...逃げたかな」
眉根を寄せ、鋭く目を細め、ダークなその紫色の目で射抜くように俺が立っているところを見る。
「ま、どっちにしろ力尽くで連れて行くつもりだったんだ。
力を使おうか」
それはまるで、今から少し準備体操でもするか、と言うような口調。
そして男が手をあげて初めて気づいた。
黒いレザーの手袋をしている。
オシャレでかっこいいものの、どこか毒々しい雰囲気を放つそれ。
そして男はふっと笑うと、その手袋を外し、口にくわえた。
「始めようか」
またもやニヤッと笑い、手をバッと振り切る。
すると突然、そのまま硬直している俺は、ロープで縛られているかのように、身動きが取れなくなった。
「これでとりあえずあんまり苦しまずに移動させられるからねぇ...」
相変わらずどこに向けているかわからないネトネトとまとわりつく笑顔を添えると、歩き出す。
それとともに、動く俺の体。
きちんと、足を使って。
自分の意思ではないけれど。