呪い屋〜呪われし幽霊少女〜
カツン、カツン。
カツ…
と、途中で音がやむ。
「たーいーちくんっ」
それまで何もなかった黒い壁に、突然にゅるんと穴が空く。
ビクっとして身構える俺の目に、まるで扉のようにくりぬかれた穴から、黒いキラキラとしたヒールが顔を出す。
「たーいーちくんっ」
とっても楽しそうな少女の声が聞こえて…
そして、とうとう、全身が見えてしまった。
そう。
あの声。
「麗奈か…」
全てを悟ってしまった気がする。
きらびやかに、スパンコールがついた黒いドレスをまとった麗奈。
まるであの、俺が呪いの依頼をしに行く前のような、控えめで優しい笑顔で…
「汰一くん…
お疲れ様」
そう言って、目を細めて笑う麗奈に、背筋がゾクっとした。
何が起こるかなんてわからない。
でも…
とにかく、
「どけっ!」
逃げなきゃならない。
俺は…
殺されるんじゃないだろうか。
あの笑顔は…
麗奈に裏切られたんじゃないだろうか…