呪い屋〜呪われし幽霊少女〜


黒田を押しのけ、必死の思いで走り出す。

足がもつれる。

転びそうになる。

でも、そんなの気にしていられない。

ここにいちゃ...

「無駄だよ。
君、俺に食べられるっての、わかんない?」

まさか…

喰われるのか!

「だ、誰が喰われてたまるか!」

なんとかバランスをとりながら、必死に走る。

でもなぜか…

麗奈のいる扉のところまでたどりつけない。

なぜだ。

あぁ、あともう少し…

もう少しでつく…

そう思って、手を伸ばす。

「無駄だって言ってるのがわからないか?
ここは俺の拠点。
俺の力が最大限に引き出せるっていうのに…」

急に黒田の口調が変わる。

俺も、その言葉に反応してピタリと足を止める。

「だ、だとしても…
喰われるってのに…誰が逃げねぇんだ、よ…」

汗びっしょりな状態で、なんとか額を拭う。

そのうちにも、黒田はジリジリと俺の方へと歩み寄ってくる。

「だーかーら。
そんなすぐ取って喰わないよ。
いろいろと手順がある」

呆れたように笑って、それからその場にあぐらをかく。

「麗薇呼んできてくれないか?
どーせ、こいつも麗薇に魅せられてあそこにいたんだろ」

口調はどこか乱暴になり、そのまま麗奈に扉の奥を指差した。

「行けって」

鋭く尖った視線で射られる麗奈。

悔しそうながらも、恐怖に怯えた表情を残して、カツカツと音をたてながら向こうへと走って行った。

「麗薇が…いるのか?」

喰われるなら喰われる。

でも、今は喰われない。

それなら、いっそとりあえず冷静になった方がいい。

もしかしたら麗薇が助けてくれるかも…
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