呪い屋〜呪われし幽霊少女〜

「…結構遠いのな」

遠回りした結果、疲れるほど歩いてしまった。

「…あんまり暗くなってからはきたくなかったのにさ…」

弱々しい俺の声が誰もいない薄暗い路地に弱々しく響く。

「しゃーねーよな」

決意を固めて、やっと見えてきた例の事務所へと足を向ける。

「っ…」

あいかわらず、にじみ出る脂汗は、俺の心をあらわにする。

その汗を震える手で無理やり拭い、また歩き出す。

階段を登り、正面へと迫る地味な入り口。

正直、そこいらのアパートの外見と全く変わらない。

隣の部屋には普通に人が住んでいるのかと目を向けるも、何かこの世のものではないものが見えてしまってはたまらないと、自然に顔を背けてしまう。
< 24 / 167 >

この作品をシェア

pagetop