呪い屋〜呪われし幽霊少女〜
意識を失えるならどんなにいいだろうと思った。
でも、どんなに痛くてもどんなに血が流れても、意識ははっきりしたままだ。
「っ…どういう...ことだよ...」
痛みを堪え、呪い屋の事務所を出たところで岩崎に呻くように問いかける。
「...全身から血が出てる...
酷いね...」
いつもよりも凛とした岩崎の声が俺の耳に届く。
そのまま、岩崎は俺を抱え込むようにして必死に移動する。
「とりあえず...私の家に行くから。
血はいくら流れても死ねないの。
傷口が塞がるまで待つしかない」
痛みに全身を支配され、もう話すこともままならない。
「私が血塗れで帰って来ても、親は何とも言わないから...
何よりも見慣れちゃってるし、それに、私のことなんてなんとも思ってない」
夜だったのが幸いした。
誰にも会わない。
それに、岩崎の涙に気がつかないふりもしてあげられる。
最後の力を振り絞り、俺は自分の体を頼むぞ、という意味と岩崎への無理すんな、という気持ちを込め、ギュッと手を握りしめた。
そんな岩崎はいつものように優しく微笑んで。
俺は、そのまま岩崎に体を預けた。