呪い屋〜呪われし幽霊少女〜
iPhoneの電源を入れる。
23:08の文字が浮かび上がってくる。
「...こんな時間に出っかな。
寝てたりしてな」
そう言うと、
「きっと起きてますよ。
今時の高校生でしょう?」
この女が死んでいるんだと再認識させるようなことを言ってくる。
「...だな」
決心を固め、連絡先から雄介の名前を呼び出すと、耳に当てる。
プルルルル...プルルルル...
まるで、死のカウントダウンだ。
そんなことを思っていると...
「はい」
雄介の声がした。
「え…あ、えと…
雄介…?」
明らかに挙動不審な俺の声が静かな部屋に響く。
その瞬間、女の唇の端がニヤリと持ち上がる…
「…どうかしたか?」
心配そうにそう言う雄介に、
「いや…なんでもねぇよ。
明日の時間割教えてくんね?
今頃になって気づいたんだよ…」
いつも通りを装い、女を見返す。
すると、女は少しつまらなそうに別な方向へ視線を向けてしまった。
逆に、岩崎の視線が突き刺さるのを感じる。
人差し指を口元にあて、シー、とすると、納得したように頷いた。
いつの間にか、涙もしゃくりあげる声も止まったようだった。
いつもと何ら変わりない口調で、ちょっと待ってな、と雄介が言う。
そして、俺は、呪い屋の女に合図した。
親指を持ち上げ、静かに頷く。
途端に女はニヤッと笑うと、何やら手を組み合わせ、息を吹き込んでいる。
何をやっているのかと聞こうとするも、女の顔は真剣そのものだ。
何か呪文のようなものがあるのだろうか…