呪い屋〜呪われし幽霊少女〜

何も言わず、ただ岩崎に身を任せる女。

はぁ、はぁ、と息を切らしたまま、岩崎のことを不思議そうに見つめている。

岩崎が女の汗を拭き終わり、そと離れると、

「…悪かった…」

そう、たしかに言った。

「え…」

驚きに、思わず声を発する俺。

さっきまでの恐怖より、とりあえず、目の前のことをハッキリさせたい。

「お前…今…」

なんとなく呪い屋の女を身近に感じ、友達のようにお前呼ばわりしてしまった。

「お前、とはなんですか…
麗薇です。
一応…岩崎麗薇…」

そう言って、わずかに…

ほんのわずかにふっと笑った。

「麗薇…?」

こいつ、笑うのか。

それに、やっぱ名前は捨ててないんだ…

岩崎、のまま、残してるのか。

いろんな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡り、混乱する。

そんな俺に、岩崎がいつものように優しく笑った。

「私の…お姉ちゃんだから。
今はどんな姿をしていても、私のお姉ちゃんであることに変わりはないから」

そう言って、姉の方を優しく見やる岩崎。

なんとなく、さっきの涙がわかった気がした。

実の姉なんだ。

たとえ記憶がないにしても、もう死んでいたとしても…

簡単に切り捨てられるはずがないから。

きっと、岩崎の中では、今でも優しくて、頼もしいお姉ちゃんだから。
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