呪い屋〜呪われし幽霊少女〜

「大丈夫だよ」

硬直したままの俺に、恐怖で凍りついているのかと思ったらしい麗奈が声をかける。

「あの人、私たちの声聞こえないし、私たちのこと見えないから」

聞こえないし見えない…?

どういうことだ?

相手はいくら顔立ちが整ってるからっていっても、明らかに普通の人間じゃないか。

ま、麗薇と話してたってことには何か理由があるんだろうけど。

「あの…!」

魅了されたのか、どうしても悪い人だとは思えず、声をかける。

しかし、その男はまるで何も見えない、聞こえないかのように俺の目の前を通り過ぎて行く…

「え…?」

「だから言ったでしょ?
あの人に何しても無駄」

目を細め、まるで嫌うように部屋を出て行く男を見送る麗奈。

「どういうことだよ…」

「知らない。
あの人、私何回か会ったことあるけど…
いつもあんな感じ…」

俺のことも見えないってのは、多分麗奈の推測だったんだろう…

ってことは、麗奈の推測通りにいくと、あの男は契約した人間は見えないってことになる。

「あれ誰?」

「わかんない…
私も何回かしか見たことないし…」

すると突然、扉の向こう側からうめき声が響く。

「麗薇…?」

明らかに麗薇の声だった。
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