私と彼と――恋愛小説。

「ちょっとだけ待ってね。簡単なのしか作れないけど…」


そのまま佐久間を見ていると、照れて顔が赤くなりそうだった。背を向けてキッチンへ姿を隠す。


「えっと…シャワー借りても良いかな？」


頭の中で、バスルーム片付いているかどうかを思い浮かべた。多分大丈夫、服も洗濯機へ放り込んだし清潔にはしてある筈だ。


「狭いけど…どうぞ。タオルはわかるとこにあるから、どれでも使ってね」


誰かと朝を迎える、久しぶりだった。ここ数年部屋へ誰かを招いた事もない。


佐伯は何度か立ち寄っただけで私のベッドで眠った事はない。


ぎこちなくはあるけれど、佐久間が部屋に居る事は不快ではないのだと思えた。


なんだか上機嫌な朝で…嬉しさが込み上げる。


クロワッサンを温めベーコンと目玉焼きを皿に乗せる。驚くぐらいに早く佐久間がシャワーを浴びてバスルームから出て来た。


持ち込んだスーツのパンツに昨日のワイシャツ…


「ねえ…シワだけでも伸ばそうか？シャツ…」


「あー物凄く嬉しいけど、大丈夫。一度着替えに帰るから」


「そう。簡単なものしか出来なかったけど、食べましょ」


「充分だよ。加奈子ちゃんが作ってくれただけで嬉しいよ」