年下くんの事情
しばらくすると、寺山の待っている客が、炎天下でコーヒーでも飲んだのか、
黄ばんだ歯をさらして、額には流れるほどの汗をこびりつかせながら
やってきた。

「いらっしゃいませ」
席を立ち、客に向かって深々と一例をする麻理子。

「あー丸内です」

「かしこまりました、丸内さまですね、ただ今情報テクノロジー支部寺山に連絡
しますので、ロビーでお待ちください」

「あーはい・・・あそこだね・・・」
太った、汗だくの男、丸内はロビーのソファーを指差して言った。

「はい」
軽く一例をして席に着くと、寺山へと電話を繋げる。

(なんだろう・・・視線を感じるなぁ・・・・)
さきほどの丸内という男がこちらを伺っている。
きっと、見る物もなくて困ってるんだろう、
客にはよくあることだと、麻理子は気にも止めないでいた。
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