年下くんの事情
俯いて床の絨毯を見続ける麻理子の耳に妙な布ずれの音が聞えてきた。
ジィ・・・・・・・・・・・・チャ
次の音で龍がなにをしようとしているのか麻理子にも把握できた。

慌てて龍の方を見やると、何のためらいもなく上着を脱ぎ始めている。

「ちょっ ちょっと!何してるんですか?」

「え・・?」
「寒いから 風呂に入るんですけど?」

「えっ?・・・今?」

「今だよ、今寒いもん。 あなたも温まった方が良いですよ。」

「えっ 私もって・・・ 一緒に? え・・」
麻理子の顔がこばわってきた。
そんな麻理子を見て、ハァーとため息を吐き出しながら、俯いて頭を左右に振る。
「・・・・後からね。 俺先に入らせてもらいます。」

「そっ・・そうよねっ」
龍の機嫌を取るように、無理して笑顔を作る麻理子。
(妙に敬語をつかうわね・・私が年上って知ったから?)

麻理子の座っている向かいのドアを開けて洗面所に入って行く。
「ちょっと 戸!」
バタン・・ 体育座りの麻理子は、慌てて左足を伸ばし、洗面所の戸を蹴り閉めた。
(あーびっくりした。 中でズボンを脱ぐなら 上の服も中で脱いだらいいじゃないの。
きっとナルシストなんだわ・・ 俺の上半身 すごいだろ? みたいな? フッ ガキんちょのくせして。
あんたなんか怖くないわ! 何かしてきたらアソコを握りつぶしてやるんだから・・。)
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