年下くんの事情
麻理子は大阪駅に着くと 知った場所だという安心感を体一杯に感じ、
笑顔で振り向いて「ありがとう! じゃ!」 とだけ、言うと 阪急梅田駅方面に向かって小走りに
走って行ってしまった。

「あ・・・」
空いている右手を麻理子に向けたが、麻理子はもう 人ごみに紛れていて見分けがつかなくなっていた。

(それで・・・いいのか?)
龍は、そう呟くと眉毛をハの字に歪め、首を右に傾けた。

龍の心の中で「もし、子供が出来たら・・・あの子はどうするんだろう・・・」という悩みを抱えたまま
大阪駅の中へとトボトボと歩いて行った。



「たっだいま♪私のおうち」

麻理子は 4階建ての小さな建物を見上げて言った。
軽々と階段を上がり、見慣れた景色を満足そうに見て回る。
ふぅ・・ふぅ・・ やっと4階っと・・ 久々に登るとしんどいわ、あははっ
階段を上がると 白いペンキで塗られたドアが見えた。 ドアの表札には
何も入っていない、 その横には小さな格子の付いた窓があった。
「ふー疲れたー やっと着いた。」
カバンから鍵を取り出して 戸を開けると 重い空気と締め切ったカーテンのせいか、
わずかにしか光が差し込まれず、部屋の状態がつかめなかったが、
麻理子は中に入って戸を閉め、鍵をかけると、ずかずかと 部屋の置くまで入っていった。

おもむろにカーテンの開いている部分に手を差し込み、窓の鍵をあけ、カーテンと一緒に開け広げた。

一気に部屋のなかに光と風が突き抜ける。
小さな洋風ちゃぶ台にオレンジ色のラグ、 小さなテレビに 可愛らしい籐カゴのラック
その奥にはさきほど通ってきたキッチンがあった。
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