年下くんの事情
洗面所には洗濯機が設置されていて、 龍はカバンを開けて 汚れた下着や、雪で濡れた服を取り出しては
無造作に洗濯機の中につっこんだ。
全部入れ終えると、ふと何か思いついたかのように顔を上げ、 ひょいっひょいっとひょっとこのドジョウすくい芸のような
足取りでトイレへ向かった。

ジャーーージョボジョボジョボ
勢い良くトイレの水が流れる音。
出てきた龍は、隣の洗面所へと進み、カバンを持ち上げると、2階へ続く階段を足早に登った。

部屋に入ると、すぐにパソコンデスクの傍にある、イスに座りカバンは足元に置いた。
パソコンの主電源のボタンを押すとすぐに デスクトップに灯りがついた。
真っ白な壁紙に4列に並ぶアイコン達。
その中の インターネットエクスプローラーのアイコンをクリックすると、ホームに設定されている、
松井証券の公式サイトが表示された。
「今日は上がるかな?」
そう呟きながら 日経平均の数値を確認する。
旅行中は 携帯でチェックしていたが、 心から楽しむ為には 賭けていない方がいいと考えて
数日前から損切りで決着をつけていたので、昨日の夜からはずっと、株の動きをチェックしていない。

龍は 高校を卒業してからずっと、父親のやり方を真似て株で小遣いを作っていた。
大学へは行っていない。
希望した大学に2度落ちている。しかも彼は、希望した大学1本で勝負していたので、浪人生として
専門学校に通っていた。
母親は 竜のそんな無茶なやり方を心配していた。
「お願いだから、来年は滑り止めも受けるのよ!いいえ・・受けさせますからね!」
そう、きつく言いつけられていた。
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