年下くんの事情

「下がりっぱなしかよ・・・はぁあ買うのこえぇな。」
息を吐きながらそうつぶやくと、 ベッドの上に寝転がった。

（明日の１番目の授業・・・どの先生だっけ？）
机の下に置いてある、カバンをひきずってまたベッドに転がる。

（はぁぁ・・・）
ため息をつくと振り返り、ベッドの下のカバンを開けて携帯を探した。
なじみの黒い携帯の角が、カバンの中で光っていた。
取り出すと龍は、手の平に違和感を感じた。

「ん？・・・・」
ベッドに仰向けになり、 目元まで携帯を持ち上げると、
なじみの黒い携帯の裏に 、ピンク色をした、ハートのキラキラシールが貼られていた。
よく見ようと 頭を持ち上げ、携帯に顔を近づける、 視界がだんだんぼやけてきた。

「あぁ・・・近づけすぎた」
そう言って、又、頭を枕に戻した。
蓋をパカッと開けると、そこには、今朝別れたばかりの麻理子の、にこっと笑った顔が映っている。

四方の隅には なにかの模様が描かれ、「Lovely」 というピンク色の、キラキラした文字が、右隅に重ねられていた。
「なにがラブリーだよ・・チッ・・」
と言いつつも 口がにやけてくる龍。
仕方がない、 ２０才にしてようやく、童貞とおさらばできた・・・と思っているのだから。
そして 龍は昨日の夜の出来事を 克明に思い出そうとして 目を閉じた。

瞼の裏では 龍はベッドの中で眠っていた。

「うっ・・お腹が・・・」
そう言って彼女が起きたんだ・・・・そして洗面所の電気をつけて・・
ジャーって音が流れてきて・・・ ここで俺、しっかり目が覚めたんだったな・・うん。
それから 彼女は 戸棚から毛布を引っ張り出してきて、それに包まって横になったんだ・・・
でも寒そうで・・・彼女の小さい肩が震えていて・・・・俺、 起きてぇ・・・それからぁ・・・
彼女の方へ歩みよりぃ・・・・それからぁ