年下くんの事情

龍は麻理子の言葉に満足したようで、 無邪気に微笑み返し、ベッドを降りると顔を洗いに浴室へ行った。
その後姿を見送る麻理子、なにか不満が残っている様子。

「いけないっ 急がなきゃー」
襖を閉めながら、洗面所にいる龍に向かって叫ぶ。
「ちょっとー 今から寝室で着替えるからこっち来ないでよ」
「わかったー。つーか、もうちょっと俺を信用してよぉ・・・・」
遠くでぶつぶつと何か言っているような龍を構わずに、襖をピシャッと閉めた。
オフホワイトの大きな襟に同色の大きなボタンが付いた、ボレロが可愛い、
下は薄き緑色の模様の付いた、膝までのフレアスカート。
初々しいスーツに着替えたらその上から割烹着を羽織った。
手首にはゴムでギャザーがなされ、スーツの生地がどこにももれない様に
完璧に覆いかぶせてある。
キッチンに立つと卵を４個出してきて小さなボウルに割り入れ、その上からちりめんじゃこを
パラパラと振りかけた。
それを菜ばしでｼｬｶｼｬｶとかき混ぜると、フライパンに油をひいてガスコンロの火をつける。
油が温度で溶けて柔らかくなるまで、冷蔵庫から高菜の漬物と油揚げを出してきて細かく刻んでいる。
その手際の良さに唖然としている龍に背を向けながら少し大きめな声で
「食べ終わったらすぐに出るから、龍くんも着替え済ませておいてね。」と告げた。