年下くんの事情
3章 利用してやる!
彼の名前は 安達龍 今年20才になったばかりで 、大人になった記念の一人旅なんだそうだ。
茶色の毛糸のダブっとした帽子に黒ぶちメガネ いかにも大学生といった風貌で
口調は ちょっと自信過剰? 自分が6年勤めて、ベテランになった頃にこんな生意気な奴が
新入社員にいたら嫌だな・・などと 麻理子は考えていた。
旅の道連れが出来た安心感からか、気持ちに余裕を取り戻しているようだ。

「えぇ・・部屋は開いていますが・・ 1泊ですか?」
フロントの女性と話す安達龍、 一緒に探すと 麻理子は言っていたが彼の後をついて歩いているだけで、
彼が旅館への道のりを調べるのも、フロントと話をつけるのも行っていた。

龍が繭をしかめながら麻理子の座るロビーに戻ってきた。

「あのさ・・・空いてたよ」

「え! やったぁ! やりましたね!」

龍の話を最後まで聞かずに騒ぎだす麻理子。

(こいつ・・自分で何もしてねーのに なんでこんなに達成感感じてるんだよ・・。)
龍は 呆れて続く言葉を一瞬忘れていた。

「お部屋、龍さんの近くだといいなぁ~」

「あ! ちょ・・・あのさ。 部屋一つしか空いてないって。」

「えええええーーー! えええ・・・ やっ やだやだ。」
麻理子は もう 疲れきっていた。 温かいロビーのふかふかのソファーに腰をかけた瞬間から
もう、他の旅館を探すのも、バスの停留所から遠く離れるのも嫌だった。

「仕方ないじゃない・・・ 君、ここで泊まるか? 俺別のところ探しに行くし。」

「ええええ やだやだ 離れるのもやだっ。」

「チッ・・・・ボリボリボリ」

また不機嫌そうに後頭部を掻く龍の姿に 麻理子は唇をキュッと結び、上目づかいで龍の顔色を伺う。
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